【2015年度】
(1)課題の概要
9・10世紀古文書の研究は、古代の社会構成・地方制度・流通経済などの解明に多くの成果を挙げてきた。こうした研究を牽引する上で大きな力となったのが『平安遺文』の存在である。『平安遺文』は、それを通覧することで平安時代古文書のほぼ全貌を知ることができる点で、関係研究者にとって等しく大きな力となった。かつて『平安遺文』が果たしたこのような総合的な研究環境の構築が、その後の史料学的研究の進展を受け、今あらためて求められている。本研究は、その基盤となる作業を関係研究者の連携によって実施し、9・10世紀古文書に関する史料学情報・学術情報の総合化をはかろうとするものである。具体的には、①調査所見・調査報告等からの史料学情報の集約・整理と相互分析、②史料学情報抽出に関する調査内容(方法・視角)の解析・調整、③研究メンバーによる連携的手法による史料学情報の協調的調査・収集を行う。なお、本研究課題は、史料編纂所が行っている平安時代史料編纂の基礎研究としての位置付けを有するものでもある。
(2)研究の成果
計画最終年4年目の本年度は、昨年度に引き続いて代表的な9・10世紀古文書を含む史料群の調査を行い、複数の調査者の協働による汎用的な調査視角・手法の確立をはかり、統一調書の書式の整備と成果の共有を行った。調査・調書作成を実施した主な史料として、九州国立博物館所蔵「東大寺等関係文書」の東大寺都維那某家地売券(長保4年)・賢信家地直稲請状(長徳元年)・河内読師賢信家地売券(長徳元年)・大僧正寛朝帖(正暦5年)・慶泉家地直稲請取状(正暦元年)・大法師慶泉家地売券(永延2年)・勧修寺別当家地充文(永延2年)・大和国大岡中郷刀禰等解(寛和3年)・高橋経三家地直稲請取状(寛和3年)・高橋経三家地売券(寛和3年)・丸部太平家地売券(天元3年)・丸部太平家地直稲請取状(天元3年)・仲為仁家地売券(天禄4年)・藤原某家地売券(康保5年)・秦阿禰子家地売券(天暦8年)・秦阿禰子解(天暦8年)・僧信慶譲状(久安4年)、「大宰府牒案」(弘仁11年)、「大宰府牒案」(斉衡2年)等がある。
調査成果を記録した調書等は電子化して研究メンバーで共有し、成果と課題の整理を行った。古文書の調査経験を有する研究者を主力としたメンバーにより、内容・分野を限定せず、当該期古文書の全体を見通した視角の設定や、史料学情報の調査・収集に関わるノウハウの実体化及び共有化がはかることができたことは、昨年度に引き続き共同研究としての大きなメリットとなった。
【2014年度】
(1)課題の概要
9・10世紀古文書の研究は、古代の社会構成・地方制度・流通経済などの解明に多くの成果を挙げてきた。こうした研究を牽引する上で大きな力となったのが『平安遺文』の存在である。『平安遺文』は、それを通覧することで平安時代古文書のほぼ全貌を知ることができる点で、関係研究者にとって等しく大きな力となった。かつて『平安遺文』が果たしたこのような総合的な研究環境の構築が、その後の史料学的研究の進展を受け、今あらためて求められている。本研究は、その基盤となる作業を関係研究者の連携によって実施し、9・10世紀古文書に関する史料学情報・学術情報の総合化をはかろうとするものである。具体的には、①調査所見・調査報告等からの史料学情報の集約・整理と相互分析、②史料学情報抽出に関する調査内容(方法・視角)の解析・調整、③研究メンバーによる連携的手法による史料学情報の協調的調査・収集を行う。なお、本研究課題は、史料編纂所が行っている平安時代史料編纂の基礎研究としての位置付けを有するものでもある。
(2)研究の成果
計画3年目の本年度は、昨年度に引き続いて代表的な9・10世紀古文書を含む史料群の調査を行い、複数の調査者の協働による汎用的な調査視角・手法の確立をはかり、統一調書の書式の整備と成果の共有を行った。調査・調書作成を実施した主な史料として、国立歴史民俗博物館所蔵備前国津高郡収税解(宝亀7年)・紀伊国那賀郡司解(承和12年)・栄山寺牒(永祚2年・正暦5年)・秦公永吉解(承和7年)・民首田次麻呂解(延暦15年)・僧平珍款状(延喜9年)及び太政官牒(寛平7年・延喜2年・延喜3年)、東大寺図書館所蔵播磨国符案(延暦12年)ほか・依智荘検田帳(貞観元年)ほか・笠小門売券案(天慶3年)ほか・板蝿杣文書案(康保元年ほか)・名張郡薦生牧券文案(康保元年ほか)等がある。この他、成果共有の効率化のためのテストケースとして、昨年度に引き続き京都文化博物館・古代学協会所蔵史料について高精細デジタル撮影を行った。調査成果を記録した調書等は電子化して研究メンバーで共有し、成果と課題の整理を行った。古文書の調査経験を有する研究者を主力としたメンバーにより、内容・分野を限定せず、当該期古文書の全体を見通した視角の設定や、史料学情報の調査・収集に関わるノウハウの実体化及び共有化がはかることができたことは、昨年度に引き続き共同研究としての大きなメリットとなった。
【2013年度】
(1)課題の概要
9・10世紀古文書の研究は、古代の社会構成・地方制度・流通経済などの解明に多くの成果を挙げてきた。こうした研究を牽引する上で大きな力となったのが『平安遺文』の存在である。『平安遺文』は、それを通覧することで平安時代古文書のほぼ全貌を知ることができる点で、関係研究者にとって等しく大きな力となった。かつて『平安遺文』が果たしたこのような総合的な研究環境の構築が、その後の史料学的研究の進展を受け、今あらためて求められている。本研究は、その基盤となる作業を関係研究者の連携によって実施し、9・10世紀古文書に関する史料学情報・学術情報の総合化をはかろうとするものである。具体的には、①調査所見・調査報告等からの史料学情報の集約・整理と相互分析、②史料学情報抽出に関する調査内容(方法・視角)の解析・調整、③研究メンバーによる連携的手法による史料学情報の協調的調査・収集を行う。なお、本研究課題は、史料編纂所が行っている平安時代史料編纂の基礎研究としての位置付けを有するものでもある。
(2)研究の成果
計画2年目の本年度は、昨年度に引き続いて代表的な9・10世紀古文書を含む史料群の調査を行い、複数の調査者の協働による汎用的な調査視角・手法の確立をはかり、統一調書の書式を整備と成果の共有を行った。調査・調書作成を実施した史料には、早稲田大学図書館所蔵薬師院文書(大和国添上郡司解(延暦7年)、東大寺三綱牒(延暦15年)、太政官牒(大同2年)、雄豊王家地相博券文(弘仁7年)、石川瀧雄家地売券(貞観14年)、東大寺上座慶賛愁状(延喜11年)等)、古代学協会所蔵史料(大和国山辺郡真菅老女墾田立券文(延暦19年)、七条令解(天暦3年・延長7年・天元2年)、勅旨所牒(延暦8年)、近江国大国郷墾田立券文(延暦15年)、東大寺返抄(長保二年)等)、東南院文書(カラー高精細写真)などがある。また、成果共有の効率化のためのテストケースとして一部史料について高精細デジタル撮影を行った。また、調査成果を記録した調書等は電子化して研究メンバーで共有・検討し、研究会において昨年度以来の成果と課題の整理を行った。古文書の調査経験を有する研究者を主力としたメンバーにより、内容・分野を限定せず、当該期古文書の全体を見通した視角の設定や、史料学情報の調査・収集に関わるノウハウの実体化及び共有化がはかることができたことは、昨年度に引き続き共同研究としての大きなメリットとなった。
【2012年度】
(1)課題の概要
9・10世紀古文書の研究は、古代の社会構成・地方制度・流通経済などの解明に多くの成果を挙げてきた。こうした研究を牽引する上で大きな力となったのが『平安遺文』の存在である。『平安遺文』は、それを通覧することで平安時代古文書のほぼ全貌を知ることができる点で、関係研究者にとって等しく大きな力となった。かつて『平安遺文』が果たしたこのような総合的な研究環境の構築が、その後の史料学的研究の進展を受け、今あらためて求められている。本研究は、その基盤となる作業を関係研究者の連携によって実施し、9・10世紀古文書に関する史料学情報・学術情報の総合化をはかろうとするものである。具体的には、①調査所見・調査報告等からの史料学情報の集約・整理と相互分析、②史料学情報抽出に関する調査内容(方法・視角)の解析・調整、③研究メンバーによる連携的手法による史料学情報の協調的調査・収集を行う。なお、本研究課題は、史料編纂所が行っている平安時代史料編纂の基礎研究としての位置付けを有するものでもある。
(2)研究の成果
計画1年目の本年度は、調査所見・調査報告等からの史料学情報の集約・整理と相互分析、史料学情報抽出に関する調査内容(方法・視角)の解析を行った(研究会:山口英男「9・10世紀古文書に関する史料学研究の課題」、加藤友康「売券に関する史料学研究の状況について」、川尻秋生「9世紀の資財帳」、稲田奈津子「随心院所蔵佐伯院関係文書の調査事例について」)。これにもとづき、個別の関心に留まらない汎用的な調査視角・手法を確立するための調査を実施し、統一調書の書式を検討し、成果の共有をはかった(史料調査・調書作成:史料編纂所所蔵・近江国愛知庄立券文、同・唐招提寺施入田券文写〔正親町本〕、京都府立総合資料館所蔵・東寺百合文書、同・東寺文書、東南院文書(カラー高精細写真)、調査内容及びデータ整理に関する検討会)。古文書の調査経験を有する研究者を主力としたメンバーにより、内容・分野を限定せず、当該期古文書の全体を見通した視角の設定や、史料学情報の調査・収集に関わるノウハウの実体化及び共有化がはかることができたことは、共同研究としての大きなメリットとなった。
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