東京大学史料編纂所

HOME > 編纂・研究・公開 > 共同研究 > これまでに実施された特定共同研究・一般共同研究の研究課題 > 研究成果:正倉院文書に関する史料学情報の研究資源化連携

特定共同研究【古代史料領域】古代史料の研究資源化

研究課題 正倉院文書に関する史料学情報の研究資源化連携
研究期間 2010~2011年度
研究経費 (2010年度)100万円(2011年度)100万円
研究組織  
研究代表者 山口英男
所内共同研究者 稲田奈津子・井上 聡
所外共同研究員 後藤 真(花園大学)・栄原永遠男(大阪市立大学)・仁藤敦史(国立歴史民俗博物館)・小倉慈司(国立歴史民族博物館)・山田太造(人間文化研究機構)・馬場 基(奈良文化財研究所)・渡邉晃宏(奈良文化財研究所)・山下有美(元和泉市教育委員会)
研究の概要
  • 2010年度
  • 2011年度
【2011年度】
(1)課題の概要
 約1万点を数える正倉院文書は、日本古代史研究にとって最重要史料のひとつであり、美術・工芸・宗教・日本語・服飾・食物など、文化・科学・産業・生活全般にわたる歴史情報の宝庫である。正倉院文書研究に関わる研究者は数多く、正倉院文書から抽出される多種多様かつ大量の史料情報・研究情報を効率的に集約・利用できる基盤の構築が、関連研究の飛躍的発展の基礎として強く期待されている。正倉院文書の史料学的調査・研究とその成果の公開及びデータベース公開は、宮内庁正倉院事務所(宝物調査)、東京大学史料編纂所(『大日本古文書』・『正倉院文書目録』・奈良時代古文書全文DB)、国立歴史民俗博物館(複製作製事業・複製による正倉院文書画像DB)、大阪市立大学(正倉院文書データベースSOMODA)において行われている。この点から本課題では、正倉院文書の字形・字体データの共有利用方式を検討することを通じて、正倉院文書から抽出される史料情報・歴史情報の学術資源化を強化発展させていくための基盤となる関連研究機関・研究者組織の連携の実現を図る。
(2)研究の成果
 2010年度に、研究資源化連携の前提となる関係データベースの状況把握及び発展性の分析を行ない、正倉院文書関係データのプラットフォームとなるべき基本情報テーブルのデータ仕様の検討及び整理を実施するとともに、正倉院文書の字形・字体データの共用方式について、電子くずし字字典DB(史料編纂所)と木簡字典DB(奈良文化財研究所)の連携システム上に試行的に実現するための仕様解析を行った。
 これらの活動を受けて2011年度は、①正倉院文書に関する史料学情報データベース構築の基盤となるデータ仕様の検討、②電子くずし字字典DBへの正倉院文書字形字体データ登録のための作業を行ない、その成果を全体研究会で報告した(井上聡「「電子くずし字字典データベース」における正倉院文書の字形・字体データの利活用」、稲田奈津子「「電子くずし字字典データベース」と正倉院文書の字形・字体データ─データベースの利用事例─」、山口英男「正倉院文書に関する史料学情報データベースの方向性について」)。
 ①に関しては、研究組織の相互連携をはかるうえからも、各々の持つレコードIDの相互変換を可能とするシステム及びデータ仕様の開発、各々のデータベースの目的と利点を生かした互恵的連携を実現する基盤としての研究核の必要性について認識を深めることができた。論点の抽出と問題の検討においては、正倉院文書研究に関わる研究組織に所属する共同研究メンバーによる情報提供と意見交換が極めて有効であった。本共同研究から生まれた方向性に基づき、これを継承発展させる研究事業として2012年度より4年計画で科学研究費・基盤研究A「正倉院文書の多元的解析支援と広領域研究資源化」(代表:山口)が採択された。
 ②については、SHIPS 電子くずし字字典DB研究グループと共同して、同DBに正倉院文書の字形字体データを登録し、2012年5月より一般公開を開始した。このことについては宮内庁正倉院事務所のご理解とご協力をいただいた。また、木簡字典DBとの連携検索についても、2012年夏より開始している。