東京大学史料編纂所

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特定共同研究【海外史料領域】在外日本関係史料の研究資源化

研究課題 『豊後切支丹史料』及びその原文書の史料学的研究
研究期間 2014~2015年度
研究経費
(2014年度)194万円
(2015年度)145.4万円
研究組織  
研究代表者 松井洋子
所内共同研究者 松澤克行・佐藤孝之・杉森玲子・松方冬子・岡美穂子・岡本 真
所外共同研究員 大津祐司(大分県立先哲史料館)・大友一雄(国文学研究資料館)・大橋幸泰(早稲田大学)・岡村一幸(臼杵市教育委員会)・川村信三(上智大学)・久留島浩(国立歴史民俗博物館)・佐藤晃洋(大分県立先哲史料館)・清水有子(明治学院大学キリスト教研究所)・Silvio VITA(京都外国語大学)・村井早苗(日本女子大学)
研究の概要
  • 2014年度
  • 2015年度
【2015年度】
(1)課題の概要
ヴァチカン図書館には、戦前・戦後を通じて日本に滞在したマリオ・マレガ氏(1902-1978、イタリア人のサレジオ会所属司祭)が蒐集した、豊後地方のキリシタン関係史料(以下マレガ文書)約1万点余りが、未整理のまま所蔵されている。日本・ヴァチカン双方の関係者の尽力により、2013年度から人間文化研究機構(主幹:国文学研究資料館アーカイブズ系)が日本側代表機関となり、ヴァチカン図書館と協力して、同文書群の整理・撮影・目録化に着手することになった。史料編纂所も、この事業の日本側連携機関の一つとして参画している。本共同研究では、マレガ文書の整理プロジェクトに関わる研究者、地元大分の研究者、キリシタン史の専門家等の参加を想定し、まず、マレガ氏自身により刊行され、ごく一部ながら文書の翻刻を掲載する『豊後切支丹史料』(正・続)所収史料の再検討を行ない、その位置づけを中心に、史料群全体についての理解を深め史料学的検討を進める。

(2)研究の成果
17世紀前半の臼杵藩のキリシタン禁制政策が、寛永12(1635)年段階の「いえ」毎の起請文提出から、正保3(1646)年の村域を超えた五人組の設定と五人組による文書提出へと展開していくことが、マレガ氏蒐集文書に即して具体的に明らかになった (佐藤論文参照)。
マレガ氏編纂の『続豊後切支丹史料』については、収載された史料の原文書のほとんどが、束A1として保存されていることが確認された。原本校訂を行なってみると、特に類族の人別記録等においては、同氏が原史料そのままではなく、かなりの加工を加えたものを掲載していることが判明した。このような編纂の過程を見ると、従来言われていた筆写や清書の補助者のみではない郷土史家等の協力が想定される。同氏の歴史研究の人脈についてはさらに検討したい。
ヴァチカンにおける調査の過程で、束A16から、マレガ氏自身の作成した収集文書についてのノート1冊が発見され、共同研究員のヴィータ氏を中心に分析作業が開始された。これにより今後、史料の収集過程、またヴァチカンへの送付の事情などが跡付けられること、史料の多くに見られたマレガ氏自身による番号の、付与方法が解明されることが期待される。
臼杵市所在史料の調査を行なうことで、藩政の機構や宗門方役人の変遷等についての基礎情報の蓄積が進んだ。
共同研究という形をとることで、人間文化研究機構・大分県立先哲史料館・臼杵市教育委員会等の国内機関と連携して大規模な調査、シンポジウム等を行なうことができた。イタリア語のノートの分析、臼杵所在史料の調査など、外国人研究者、地域の研究者をも含む共同研究は文書群の総体的把握に大いに役立っている。