【2015年度】
(1)課題の概要
奈良市所在の法相宗大本山薬師寺の本坊所蔵の史料(文書・記録類、聖教を除く)については、1981年より本所と奈良文化財研究所(奈文研)が共同で本格的な悉皆調査を進めてきた。調査の内容は史料一点ごとの調書作成と撮影が主なものであるが、調書作成についてはほぼ終了しつつあり、奈良文化財研究所の「薬師寺典籍文書データベース」で一部が利用できる環境にある。また、この共同調査の成果をもとに、一部の中世史料は翻刻紹介され、中世後期の研究に活用されている。
しかしながら、史料群全体を見渡した場合、中世史料は様々な箱に分散して残存し、全体としては研究に活用しにくい状況にある。そこで本研究では、それら個別分散的に存在する中世史料の全体像を把握し、中世史研究一般の研究資源として活用の促進を図る。
(2)研究の成果
・中世史料の調書データの原本校正を終了し、「薬師寺中世史料目録」(稿)を作成した。これにより色々な函に分散して所在する中世史料の全体像を把握できるようになった。
・前年度より引き続き第五函・第九函の翻刻の原本校正を行うとともに、それ以外の函の中世史料(文書類)の翻刻・校正、「有法差別等問答集」(第二八函七八号)の紙背文書の翻刻・校正を行った。これにより中世史料のうち記録・引付類を除く文書(各種法会関係の差定類・練行衆交名・世俗支配状などを除いた書状様のもの)全体の翻刻を作成したことになる。
・近世後期に作成された二種類の「記録目録」(第二三函一三七号)・「宝物目録帳」(第二三函一三六号)と現存の文書箱の調査により、近世期における薬師寺の史料保存・管理のあり方を分析した。
・以上の成果は、及川編『薬師寺の中世文書』(東京大学史料編纂所研究成果報告2015-3)として刊行した。
・また、公開研究会「古文書が語る中世の薬師寺」(2015年11月29日、於薬師寺まほろば会館)を開催した。
【2014年度】
(1)課題の概要
奈良市所在の法相宗大本山薬師寺の本坊所蔵の史料(文書・記録類、聖教を除く)については、1981年より本所と奈良文化財研究所(奈文研)が共同で本格的な悉皆調査を進めてきた。調査の内容は史料一点ごとの調書作成と撮影が主なものであるが、調書作成についてはほぼ終了しつつあり、奈良文化財研究所の「薬師寺典籍文書データベース」で一部が利用できる環境にある。また、この共同調査の成果をもとに、一部の中世史料は翻刻紹介され、中世後期の研究に活用されている。
しかしながら、史料群全体を見渡した場合、中世史料は様々な箱に分散して残存し、全体としては研究に活用しにくい状況にある。そこで本研究では、それら個別分散的に存在する中世史料の全体像を把握し、中世史研究一般の研究資源として活用の促進を図る。
(2)研究の成果
・今年度は三回の史料調査を通じて中世史料の現在の所蔵状況を史料一点ごとに点検し、1981年以降に作成された調書の通りに全点収蔵されていることが確認できた。
・また第一~三函、第九函、第一二~一六函、第二一~二三函、第二五函の中世史料について調書データの原本校正を行った。これによりまとまって中世史料が収納されている函については調書データの校正が終了した。
・第五函・第九函の中世史料については共同研究者で分担をして翻刻を進め、必要なものについては原本による校正を行った。これにより中世史料のうち文書(書状類)の核となる部分の翻刻が進んだ。
【2013年度】
(1)課題の概要
奈良市所在の法相宗大本山薬師寺の本坊所蔵の史料(文書・記録類、聖教を除く)については、一九八一年より本所と奈良文化財研究所(奈文研)が共同で本格的な悉皆調査を進めてきた。調査の内容は史料一点ごとの調書作成と撮影が主なものであるが、調書作成についてはほぼ終了しつつあり、奈良文化財研究所の「薬師寺典籍文書データベース」で一部が利用できる環境にある。また、この共同調査の成果をもとに、一部の中世史料は翻刻紹介され、中世後期の研究に活用されている。
しかしながら、史料群全体を見渡した場合、中世史料は様々な箱に分散して残存し、全体としては研究に活用しにくい状況にある。そこで本研究では、それら個別分散的に存在する中世史料の全体像を把握し、中世史研究一般の研究資源として活用の促進を図る。
(2)研究の成果
・七月の第一回目の調査では、主に函番号一桁の函に含まれる中世史料の確認と、第五〇函以降の函に含まれる史料の調書作成を行った。今回調書を作成したものの中からは、中世前期の聖教、及びその紙背文書が新たに発見された。また、継続中の函番号順の撮影とともに、撮影が相当先となる函に関しては便宜的に中世史料を抜き出して撮影を行った。これにより中世史料の全体を写真で閲覧し、作業することが可能になった。
・三月の第二回目の調査では、中世史料がまとまって残存している第五函・第一六函・第二一函・第二三函を中心に、2013年度に作成した中世史料リスト(稿)に照らし合わせて、史料の所在と内容の確認を行った。また聖教調査のグループとの情報交換により、文書として保存されてきたまとまりのなかに、もともと聖教のまとまりにあった史料が相当数紛れ込んでいることが確認された。
・また、中世史料リスト(稿)の作成により研究グループ内で薬師寺所蔵の中世史料の全体像を概観できるようになった。
・二〇一三年度は文書調査の他に、近世以来文書を収納してきた函についても調査したが、寺内での文書の保存についてはこれまでの調査ではあまり顧みられず、共同研究によって始められた部分であり、近世における寺内での中世史料の保存・利用の問題など新たな論点が出されることとなった。
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