東京大学史料編纂所

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研究種目名 基盤研究(S)
研究課題名 マルチアーカイヴァル的手法による在外日本関係史料の調査と研究資源化の研究(26220402)
研究期間 2014年度~2018年度
研究代表者 保谷 徹
研究目的 本研究では、東京大学史料編纂所が所蔵する主に一六世紀から一九世紀末頃までの海外マイクロフィルム(二〇か国・七〇機関以上、約一五〇万コマ) をデジタルアーカイヴズ化し、多言語対応可能な検索閲覧システムの開発を行うとともに、国内に所在する対外関係・対外交渉史料を含む採訪史料群(約五〇〇万コマ)や主要な編纂外交史料集(清書本・写本)を収め、海外史料と国内史料を関連付けて横断的に検索する機能の開発を検討する。さら に在外日本関係史料の重点的な調査・収集と分析に基づき、日本史を世界史的視座から見るマルチリンガル、マルチアーカイヴァルなプロジェクト研究を推進する。かかる研究を通じて史料の補充と新規収集を進め、構築したデジタル研究資源の蓄積と活用につとめて、これを新たな学術資源として市民・研究者へ公開し利活用をはかることを目的とする。
研究実績の概要
  • 2015年度
  • 2014年度
【2015年度】
本研究では、デジタルアーカイヴズ=研究基盤の構築を進めるチームに加え、史料調査・収集の重点課題を扱う九つのチームを設定している。すなわち、①欧米史料補充調査、②古写真(写真史料)調査、③ロシアⅠ(ロシア史料調査と共同研究・国際研究集会の実施)、④ロシアⅡ(史料の共同研究)、⑤ロシアⅢ(アイヌ・北方史史料研究:谷本代表)、⑥中国史料研究(中国档案研究/倭寇図像研究〈須田代表〉)、⑦日独関係史料研究(五百旗頭代表)、⑧日本ハワイ関係史料研究(原山代表)、⑨南欧語史料研究(岡代表)である。このうち①~④・⑥は保谷担当。
以下、研究実績の概要をかかげる。
(1)二〇一五年度は本所情報システムのリプレースにあたったため、二〇一四年度から一部経費を繰り越し、リプレースと連動してデータサーバ機器と画像ビューワの更新を実施した。デジタルアーカイヴズ構築班では、メタデータ付与作業に関する検討会を数次開催しつつ、データ登録作業について検討をおこなった。作業はおおむね、①データサーバへのアップロード、②ファイル単位のメタデータ入力(簡易目録)、③史料アイテム単位のメタデータ(一点目録)入力に分かれ、さらに国内採訪による対外関係・対外交渉史料マイクロフィルムのデータ入力がこれに加わった。今期は新たにオランダ語史料対応の人員を補強して作業を行った。
現在登録作業は、海外マイクロ二七三九本のサーバへの登録を完了し、このうち計九九六本(英・米を中心に八九一本・蘭一〇五本)について、ファ イル単位のメタデータ入力を完了した。また、英国外務省対日一般外交文書(FO46)、さらに長崎県立図書館(現長崎歴史文化博物館)所蔵長崎奉行所幕末維新関係史料、高田屋嘉兵衛関係文書(本所寄託手続き中)について、一点目録の作成および登録をおこなった。これらの画像データはHi-CATPlus(採訪史料の検索閲覧用システム)から所内での公開運用を開始している。
外務省外交史料館が所蔵する「通信全覧」および「続通信全覧」のデジタル撮影は、本年度五万コマを撮影して計十一万コマの撮影を完了した。引き続き「外交公文」シリーズの撮影を実施し、撮影数は計十三万コマとなった。この撮影データはすでに作成済の一点目録(目次)をメタデータとして付与し、Hi-CAT Plus から公開する予定である。なお、「通信全覧」および「続通信全覧」は二〇一五年度の文化審議会において重要文化財とする答申がおこなわれ、本作業はその調査にも貢献している。【デジタルアーカイヴズ構築班】
(2)四月二〇日、中国国家博物館との共同研究の一環として、東京大学史料編纂所主催「倭寇と倭寇図像をめぐる国際研究集会」を開催した(参加四〇名)。集会ではまず、研究代表者である須田牧子助教(史料編纂所)がこの間の研究経過を報告し、ついで中国国家博物館の陳履生副館長から「版刻の使い道─明代典籍の挿絵にある抗倭図の研究─」と題し、明代典籍に描かれた倭寇図像に関する報告があった。残念ながら陳副館長は急遽欠席となったため、中国科学院自然科学史研究所黄栄光副教授の翻訳・代読による発表となった。続いて、岡山大学の遊佐徹教授から「小説に〝描かれた”倭寇─明清倭寇小説概論」と題する報告をいただいた。明清期の中国小説に取り上げられた倭寇の記述や倭寇図像を紹介し、嘉靖期の強烈な記憶が読み物となり語り継がれていったこと、かかる〝倭寇小説”が中国民衆の間のみならず、日本やベトナムにまで伝播し流布していったことなどが指摘された。倭寇研究の新たな視点が提示され、活発な議論がおこなわれた。陳報告は年度末に刊行された『東京大学史料編纂所研究紀要』に収録され、遊佐報告は倭寇論集(二〇一六年四月刊行)に掲載された。
(3)五月一九日、本所と日本学士院(杉村隆院長)共催による「日露関係史料をめぐる国際研究集会」を実施した(参加者六〇名)。報告は以下の三本である。保谷 徹(東京大学史料編纂所)「在外日本関係史料のデジタルアーカイヴズ化プロジェクトについて」、ワジム・クリモフ上級研究員(ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所)「一八六二年日本使節団のロシア訪問─出版物とクロンシュタット」、セルゲイ・チェルニャフスキー館長(ロシア国立歴史文書館)「海軍提督E・I・アレクセエフ─海軍司令官にして政治家」。
この詳細については、別項(史料編纂所主催研究集会等)をご覧いただきたい。なお、海軍文書館長らは、研究集会に先立って日本学士院を訪問して杉村隆院長・塩野宏幹事と懇談している。また、報告者らは研究集会の翌日から鹿児島へ出張し、一八九一年ニコライⅡ世(当時皇太子)の訪問地などを訪れた。とくに、鹿児島県歴史資料センター黎明館の企画展「幕末薩摩の留学生」を見学し、同館の灰床義博館長と懇談する機会を得た。ロシア側の二報告は年度末に刊行された『東京大学史料編纂所研究紀要』に収録された。 (4)ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所との共同研究として、サハリンアイヌとの交易帳簿の日露両国語による出版公開の準備をおこなっている。本年度もクリモフ研究員を東京へ招聘して翻訳作業をおこなった。
(5)粗訳が完了したロシア海軍文書館所蔵のリハチョフ日記(一八六一~六二)の翻訳精度をあげる作業を実施し、史料集としての公開を目指している。
(6)ロシア連邦サンクトペテルブルク市へ出張し、日本関係史料の調査・収集および共同研究の打ち合わせ等をおこなった(九月)。訪問先は、ロシア国立歴史文書館・同海軍文書館・ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所・ロシア国立サンクトペテルブルク図書館(以上、サンクトペテルブルグ市)ほか。詳細は採訪報告を参照されたい。九月二九日、ロシア歴史文書館において研究協力覚書の交換をおこなった。【以上、ロシアⅠ・Ⅱ班】
(7)古写真研究プロジェクト(保谷代表)、谷科研(基盤研究🄒)と連携し、大英図書館、ロンドン大学アジア・アフリカ研究センター(以上。ロンドン市)、コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所、フランス国立図書館、フランス写真アーカイヴズ(以上、パリ及びパリ郊外)へ出張・調査を実施した(一一月)。あわせてフランス国防省歴史資料部、フランス外交文書館における日本関係史料調査を実施した【欧米補充調査班・古写真班】
(8)中国班では、倭寇と倭寇図像をめぐる国際研究会を開催し、倭寇論集 (須田牧子編・勉誠出版)の出版を準備した(刊行は次年度四月)。また、彭浩特任研究員により、中国第一歴史档案館(北京市、九月)、中央研究院歴史語言研究所(台北市、三月)の日本関係档案調査を実施した。【中国班】
(9)ドイツ班では、基盤研究🄑「日本関係ドイツ史料の利用可能性」(代表 五百旗頭薫)と連携して、ベルリン(リフィタフェルデ)連邦公文書館における史料調査を実施した(七月・三月)。フィルムベースで収集したものはデジタル化し、現在までに総計五万コマの画像データを取得した。
日欧交流の成果でもあった吉野作造の講義録の収集・分析に従事し、吉野作造講義録研究会編、五百旗頭薫・作内由子・伏見岳人責任編集『吉野作造政治史講義 矢内原忠雄・赤松克麿・岡義武ノート』(岩波書店、二〇一六一一月)全五一二頁を刊行した。また、資料調査の成果を元に、三月一八日、ワークショップ「吉野作造講義録の意義:『吉野作造政治史講義』刊行に寄せて」を開催し、あわせて研究会「日本関係ドイツ史料の所在と利用」をおこなった(参加者七〇名)。【ドイツ班:五百旗頭薫代表】
(10)ハワイ班では、ミシガン大学およびWalter P. Ruther Library (WayneState University)において、一九四〇年代のアメリカにおける日系社会に関する資料調査を実施した(一〇月)。太平洋戦争に伴うアメリカ兵への日本語教育に関わる資料、太平洋戦争後の民主党の労働政策に関わる資料に関する調査を行った。次いで、サンフランシスコ国立文書館において、一九四〇年代のハワイにおける日系社会に関する資料調査を実施した。ハワイでは、太平洋戦争後、この時期の労働運動に日系人が前衛として深く関わっており、本調査の資料を分析が俟たれる(一月)。
一月には、ハワイ州立文書館(ホノルル市)において、日本関係史料の撮影調査を実施した(一月)。参加者は、原山浩介・秋山かおり(以上、国立歴史民俗博物館)、保谷徹・佐藤雄介(以上、史料編纂所)、若山太良・藤方博之・曺承美・下田桃子・水上たかね・澤井勇海・福本啓介・崎島達矢・菊池智博(以上、保谷ゼミ)である。撮影には、今回新調したNIKON D810(海外S科研)と、SONY DSC-RX1R(保谷)の二台のデジカメを使用し、日本から撮影用ポールなどを持参して行った。その結果、ハワイ政府文書のうち、日本・ハワイ条約の原本をはじめ、ハワイ外務省史料・内務省移民関係史料など、日本関係の約七〇〇〇コマをデジタル撮影し、現地新聞マイクロフィルム一〇八件を収集することができた。この画像データは簡易目録を付してHI-CAT Plus で公開される予定である。アメリカ合衆国への併合までの、日本とハワイの外交をめぐり、資料の分析が俟たれる。【ハワイ班:原山浩介】
(11)南欧班では、ポルトガル国立公文書館、イエズス会歴史研究所における調査と研究打ち合わせを実施した(三月)。また、二月に締結した学術協力協定にもとづき、ポルトガル国立公文書館からポルトガルのアジア植民地行政府文書であるモンスーン文書四・五万コマ、さらに旧海外領土文書館旧蔵モンスーン文書一・二万コマのデジタル撮影データを受理した。後者はまったくの新出史料である。【南欧班:岡美穂子代表】
(12)ロシアⅢ班では、ロシア連邦サンクトペテルブルク市を訪問し、ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所との研究協定をうけて、同研究所図書室所蔵の旧樺太蔵書の調査を実施した(一一月)。また、金田一京助旧蔵アイヌ語辞書の調書を作成した。あわせて、一一月一九日に同研究所においてワークショップならびに研究打ち合わせを実施し、コレクション形成史の重要性を確認し、二〇一六年度に札幌でこれに関する国際研究集会を開催することで合意した(出席者は、谷本、佐々木、鈴木建治、兎内、シェプキン、マランジャン、クリモフ各氏)。【ロシアⅢ班:谷本晃久代表】
最後に、彭浩特任研究員の著書『近世日清通商関係史』(東京大学出版会、五月)が、第五八回日経・経済図書文化賞を受賞し、中国第一歴史档案館などによる一次史料の調査・収集が高く評価されたことを喜びたい。
備考