東京大学史料編纂所

研究種目名 若手研究(B)
研究課題名 中世禅宗寺院における農業知識に関する研究─抄物史料の活用を通して─(24720291)
研究期間 2012年度~2016年度
研究代表者 川本 慎自
研究目的 本研究は、中世禅宗寺院領の展開の背景の一つとして、荘園における生産 活動、とくに農業についての知識を禅僧がいかに共有・蓄積していたかを明 らかにしようとするものである。具体的には、禅宗寺院内で行われた漢籍・ 禅籍の講義に着目し、その講義記録である「抄物」を史料として活用して典 籍受容の様相を広く追うことによって、禅僧の知識形成の過程を考察するも のである。なお、申請時点では二〇一五年度が最終年度の予定であったが、 年度後半にあらたな関係史料の所在を確認したため、所定の手続きを行って 研究期間を延長し、本年度に引き続き調査を行うこととしたものである。。
研究実績の概要
  • 2016年度
  • 2015年度
  • 2014年度
  • 2013年度
  • 2012年度
【2016年度】
本年度の調査としては、前年度後半に新たに得た知見をもとに、岡山県の禅宗寺院における知識関連史料の調査を行った。また、禅宗寺院にとどまらず、顕密系寺院における知識伝達関連史料の調査も他科研等との合同で行い、禅宗寺院におけるあり方との比較を行った。調査の詳細については、史料採訪報告の各項目を参照されたい。また、史料編纂所の所蔵する禅宗関係史料(『文明明応年間関東禅林詩文等抄録』ほか十五点)についてデジタル化を行い、画像を所蔵史料目録データベースから公開した。
 こうした調査を踏まえて、本年度の研究においては、農業知識の基礎となる計算能力を禅僧がどのように習得しているかという点について十四世紀の禅僧中巌円月を事例として考察し、また農業知識に付随した農事歌の知識が十五世紀の五山禅林や公家社会にどのように受容されていたかという様相についても考察を行った。また、禅宗寺院における漢籍・禅籍の講義そのもののあり方についても概観し、この時期のあらたな儒学の潮流である宋学の受容が、典籍そのものの受容にとどまることなく、農業知識やそれに隣接する本草・医学のような科学的知識、農事歌の延長線上に位置する芸能・文学の知識など、様々な方面へ展開していっていることを明らかにした。
 なお、本科研の研究報告書に代わるものとして、義堂の会による論集『空華日用工夫略集の周辺』の刊行への協力を行った。
備考