東京大学史料編纂所

研究種目名 基盤研究(C)
研究課題名 戦国時代における「大敗」の心性史的研究(15K02827)
研究期間 2015年度~2017年度
研究代表者 黒嶋 敏
研究目的 本研究は、戦国時代でも非常にまれな合戦での「大敗」に着目して、敗者側の大名領国に与えた政治的・社会的影響および精神面への影響を考察し、そこから戦国大名権力の特質に迫ろうとするものである。予期せぬ「大敗」に遭遇した後に、大名支配がどのように変質したのか。衰亡や弱体化といった通説的な整理を越えて、様々な影響を多面的に考察するためには、同時代における戦死者の供養・顕彰といった諸事象も「大敗」との因果関係に位置づけられる、心性史研究の方法論が効果的である。さらに、ほかの「大敗」事例との比較検証を行うことで、対象となる各大名領国の支配のあり方をより鮮明に浮かび上がらせ、そこから当該期における地域性の解明にもつなげていくものである。
研究実績の概要
  • 2017年度
  • 2016年度
  • 2015年度
【2017年度】
 研究期間の最終年次となる本年度は、前年度に引き続き、研究代表者および連携研究者らが、それぞれ担当する「大敗」の史料・文献について、収集・調査を行った。本年度より連携研究者の変更が生じたため研究体制の見直しを行い、担当者ごとに七つの「大敗」事例を割り当て、上記の作業を分担して進めた。このうち関連史料の残存量が多い長篠の戦い(1575年)については、学術支援専門職員1名を雇用し、重点的に収集した史料のデータ化と整理作業を遂行した。
 あわせて、「大敗」関連史跡の現地調査として、2017年9月に研究メンバーらで福島県二本松市ほかの人取橋の戦いの故地に赴いた。現地では、城郭・道路遺構など合戦故地における戦国期関連史跡の調査に軸足を置くとともに、本研究の研究目的の一つでもある供養のあり方を検証する手がかりとして、合戦後から後世における供養塔・鎮魂碑なども調査対象に含めた。調査に際しては、現地の状況に精通しておられる山田将之氏(伊達市教育委員会)にご同行をいただき、種々のご教示に預かった。記してここに感謝の意を表したい。
 また、研究期間の最終年次であることから、成果公開の場として、2017年12月2日に東京大学において、公開研究会「戦国合戦〈大敗〉の歴史学」を開催した。当日の報告者と報告題目は以下の通りである。
・黒嶋 敏「趣旨説明―〈大敗〉への招待」
・山田貴司「大内義隆の「雲州敗軍」とその影響」
・播磨良紀「今川義元の西上と〈大敗〉―桶狭間の戦い―」
・福原圭一「「大敗」からみる川中島の戦い」
・谷口 央「三方ヶ原での〈大敗〉と徳川家臣団」
・金子 拓「長篠おくれの精神史」
・畑山周平「南九州戦国史のなかの木崎原の戦い」
・黒嶋 敏「伊達家の不祥事と〈大敗〉―人取橋の戦い―」
 各報告後には質疑・討論の場を設け、「大敗」後の理解をめぐって、活発な討論が展開された。当日は研究者のほか、学部学生や一般の歴史愛好家を含む103名の参加を得た。
 なお、この公開研究会での各報告については論文化を進め、同題の論文集として2018年度内に刊行できるよう、準備を進めているところである。
備考